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大阪高等裁判所 平成2年(行コ)32号 判決

枚方市招提田近二丁目三番地

控訴人

大阪バルブ株式会社

右代表者代表取締役

大島直哉

右訴訟代理人弁護士

谷村和治

枚方市大垣内町二丁目九番九号

被控訴人

枚方税務署長 松岡英樹

右指定代理人

杉浦三智夫

森並勇

和田晤郎

壺見晴彦

主文

一  本件控訴を棄却する。

二  控訴費用は、控訴人の負担とする。

事実

第一申立

一  控訴人

1  原判決を取り消す。

2  被控訴人が昭和五二年一〇月三一日付けでした、

(一) 控訴人の昭和四八年七月一日から同四九年六月三〇日までの事業年度の法人税につき、その法人所得金額を金一億九、八六七万四、六四七円とする更正処分のうち金一億八、〇七三万五、五五九円を超える部分及び重加算税金一、七二四万二、五〇〇円の賦課決定処分のうち金一、五七九万一、七〇〇円を超える部分並びに過少申告加算税金一三万四、八〇〇円の賦課決定処分を、いずれも取り消す。

(二) 控訴人の昭和四九年七月一日から同五〇年六月三〇日までの事業年度の法人税につき、その法人所得金額を金一三億七、六四一万七、九六三円とする更正処分のうち金一二億九、二三七万一、九一一円を超える部分及び重加算税金四、〇一三万九、四〇〇円の賦課決定処分のうち金三、三四八万八、七〇〇円を超える部分並びに会社臨時特別税の税額を金三、五〇〇万三、二〇〇円とする更正処分のうち金三、一六四万三、三〇〇円を超える部分をいずれも取り消す。

(三) 控訴人の昭和五〇年七月一日から同五一年六月三〇日までの事業年度の法人税につき、その法人所得金額を金八四六万五、二一三円とする更正処分及び重加算税金七六万三、八〇〇円の賦課決定処分を、いずれも取り消す。

3  訴訟費用は、第一、二審とも、被控訴人の負担とする。

二  被控訴人

主文同旨

第二主張及び証拠関係

原判決の事実摘示は同一であるから、ここに引用する。但し、次の訂正、付加をする。

一  原判決七枚目裏七行目の「施したうえ、」を「施したうえ(この修正を施さないでした被控訴人の推計方法は、合理性を欠き、課税庁が負担すべき立証責任を転換させるものとして違法である。)、」と改める。

二  同八枚目表二行末尾の括弧内冒頭に「トン当たり二万円として合計」を加え、同四行目冒頭から括弧内すべてを「棚卸鋳鋼材料のすべてについてトン当たり二五万一、一一六円と評価しているから、合計三、一三八万九、五〇〇円となる。」と改め、同一一行目冒頭の「終了している。」の次に次項を加える。

「したがって、右の時点で、昭和五〇年の夏期支給分として合計一億三、三二九万五、八〇〇円の各賞与支給債務が確定したというべきである。ただ、現実の支給は、組合との協定によって、昭和五〇年の夏期支給分のうち、六、二八九万三、三〇〇円(源泉所得税等控除前の金額)は夏季賞与として、残額は、年末賞与の一部として各支給し、昭和五一年の夏期支給分のうち五、八二六万二、三〇〇円(源泉所得税等控除後の金額)は夏季賞与として、残額は年末賞与の一部として各支給した。」

三  同枚目裏二行目末尾に続けて、「そうでないと、法人税法二二条一項で、各事業年度の所得の金額について、「当該事業年度の益金の額から当該事業年度の損金の額を控除した金額とする。」旨規定した法意に反することとなる。」を、同行目の次に次項を加える。

「仮に、右賞与支給債務が確定していないとしても、同条三項二号が、損金の額について、当該事業年度終了の日までに確定した債務の額であることを要するとするのは、不確実な費用を損金として計上することを排除する趣旨にあるから、この趣旨に反しない限り、あまり厳格に解する必要はないというべきである。そうすると、一般に適正妥当と認められる健全な企業会計処理の範囲内で処理された本件各事業年度の損金の計上は、それによって損金の額が不確実となるおそれがないから、これを認めない被控訴人の主張は、継続企業としての会計処理、収入と経費との有機的相関関係を無視し、妥当性を欠く不合理なものである。」

四  同枚目裏三行目の次に、次項を加える。

「四の2のうち、被控訴人の推計方法が、合理性を欠き違法であるとの主張は争う。控訴人のように、多品種、多数量の材料によって製品を組み立て製造する企業にあっては、長年にわたる事業継続の間に、弁箱と弁蓋の数量が対応しなくなるのが、むしろ通例である。そのうえ、推計の資料とした原票(乙第四号証)は、正確に記載されているから、これによる推計に不合理や違法のあろうはずがない。また、控訴人の鋳鋼材料には、弁箱と弁蓋のほかに、ハンドル、ヨーク、弁体その他があるから、弁箱と弁蓋以外に鋳鋼材料がないと仮定するのは不当である。」

五  同枚目裏五行目の「損金経理」の次に「(昭和五一年六月期の確定申告書や決算書に棚卸資産について正規の評価損は計上されていない。)」を、同八行目の「同3のうち」の次に「、昭和五〇年、五二年の各夏季支給の従業員賞与についてした支払準備は、利益を圧縮する目的のため採られた手段にほかならないから、これをもって同賞与債務が確定したとすることはできない。また、」を加える。

理由

一  当裁判所の判断は、原判決の理由一ないし四(原判決八枚目裏末行目から同一三枚目裏七行目まで)と同一であるから、ここに引用する。但し、次の削除、挿入、付加をする。

1  原判決一一枚目表二行目から三行目にかけて「二八八八万九六一〇円」とあるのを削り、そこに「二、八八八万九、五〇〇円」を挿入する。

2  同一二枚目裏二行目冒頭から同三行目冒頭の「いたこと、」までを削り、そこに「であって、その預金は、控訴人に帰属する簿外預金にほかならないこと、」を挿入し、同一一行目の「及んだこと」の次に次項を挿入する。

「(昭和五〇年に支給した賞与は、夏季六、二八九万三、三〇〇円、年末七、二三万七、四〇〇円の合計一億三、五二二万〇、七〇〇円であるから、仮に、控訴人主張のように、夏季賞与(昭和四九年一二月二一日から昭和五〇年六月二〇日まで)として合計一億二、五七六万九、〇〇〇円を算定したとすれば、年末賞与(同年六月二一日から同年一二月二〇日まで)の額七、二三二万七、四〇〇円は夏季賞与の支給残額六、二八七万五、七〇〇円に九四五万一、七〇〇円しか上乗せしていないことになる。また、昭和五一年夏季賞与として算定したという合計一億三、三二九万五、八〇〇円についても、ほぼ同様で、いずれも、控訴人の利益状態に照らし、不自然かつ不合理である。)」

二  そうすると、控訴人の本件請求を棄却した原判決は、相当であって、本件控訴は、理由がないことに帰着する。そこで、本件控訴を棄却することとし、民訴法八九条に従い、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 古嵜慶長 裁判官 上野利隆 裁判官 瀬木比呂志)

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